緊急事態宣言は5月末で解除できるのか
9都道府県を対象とした新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言は、期限を5月末に解除できるのかが焦点となる。
緊急事態宣言解除には感染状況をステージ3(感染増加)に引き下げるのが最低条件となるが、感染症の専門家は「これまでより高いハードルを設けるべきだ」との意見を強めている。「すぐに解除の誘惑に駆られる、そこを我慢することが次の光につながる」
基本的対処方針分科会の尾身茂会長は5月14日の記者会見で、リバウンド(感染再拡大)を引き起こさない程度まで感染状況を抑えることが緊急事態宣言解除の要件になるとの考えを示した。
5月14日の分科会では、専門家が政府の案に反旗を翻し、北海道、岡山、広島の3道県の宣言の追加を決めた。尾身氏の指摘では、経済活動を重視して感染対策を小出しにしがちな政府に釘を刺したものだ。
専門家たちが危機感を強めているのは変異ウイルスが予想を上回るスピードで国内に定着しているためだ。国立感染症研究所は全国で増加している新型コロナウイルスの9割以上が変異株に置き換わったと推計、感染力だけでなく、重症化のリスクも高いとみられ、全く新しいウイルスだとの指摘もある。
2月末で緊急事態宣言を前倒しで解除した大阪府などでは、入院待ちの患者が死亡するなど「医療の崩壊」が現実のものになりつつある。政府関係者によると、厳しい対応を取るよう「医療現場の臨床医医から分科会が突き上げられている」という。分科会メンバーは現在の宣言期限となる5月末の解除について「厳格に判断しなければならない」と強調する。