新型コロナウイルス刑務所でも感染拡大
1000人近くの受刑者が収容されている千葉刑務所(千葉市中央区)で新型コロナウイルスの集団感染が発生した。2月5日時点で感染者は受刑者と職員など90人にのぼり、複数人の受刑者が収容される「共同室」での集団生活が感染拡大の要因と見られている。
護送業務等に支障が生じるとして、千葉地裁で予定されていた公判期日が取り消されるなどの影響が出てきており、出雲路朗総務部長は危機感を覚えていると話した。
同刑務所によると、最初の感染者が確認されたのは1月8日、30代男性刑務官2人がPCR検査で陽性と判明した。同1月13日、20代男性刑務官の感染が確認され、この男性刑務官が担当していた受刑者収容棟の二つのフロアを中心に受刑者への感染が相次いで発覚した。
同1月22日、受刑者33人、同1月31日には11人への感染が確認されるなどし、2月5日までに受刑者など81人、職員」9人の感染が確認されている。
同刑務所には受刑者ら926人が収容されており、刑務官ら職員283人が勤務している。感染の中心となった2フロアには、約100人の受刑者が収容されており、単独室と3~6人程度を収容する共同室がある。感染は一緒に刑務作業に従事したり、共同風呂を利用した受刑者の間で広がっている。
現在は法務省のガイドラインに基づき、全ての刑務作業は中止され、感染者や発熱などの症状を訴える受刑者の大半が独居房に隔離されている。共同室の全員が感染している場合はそのまま共同生活を続ける場合もあるが、全員が無症状、軽症だという。
ただ、同刑務所は初犯で刑期の長い受刑者を収容しているため、高齢者も多く、重症化の懸念もある。独居房などでの隔離が逼迫した場合は他の施設への移送も考えられているという。
感染の拡大は職員の負担も多きいい、これまでに感染の疑いがある受刑者らを収容する際は、刑務官が防護服を着用し、受け入れ時の身体検査を行うなどしてきた。1月の感染拡大以降は二重にした医療用N95N95マスクや手袋、ゴーグルやフェイスシールドも着用し、感染対策にいっそう配慮して勤務している。
また、感染者と接触の疑いがある職員は、保健所の調査で濃厚接触者とならなくても自宅待機させるなどしており、残された職員の業務は増加している。
刑務所内は落ち着いた状態にあるといい、感染への不安を訴える受刑者の暴力的な行為などは確認されていないという。ただ、感染収束のめどは立っておらず、出雲路部長は「苦しい状況だが国の基準に従って淡々とやっていくしかない」と述べている。