アメリカ新大統領バイデン政権「脱トランプ」急ぐ

バイデン新アメリカ大統領は1月20日の就任早々、トランプ政権が自国第一で推進してきた外交政策・内政を矢継ぎ早に転換する。新政権発足から10間、100日間と目標を定めて国民全体に脱トランプを印象付けアメリカの再建に向けて好スタートを狙っている。

政権発足最初の10日間は、議会の承認が不要な数十本の大統領令や関連文章に対し署名をする見通し、地球温暖化対策の国際的な枠組み、パリ協定への復帰や、イスラム諸国を対象とした入国制限の撤回など、オバマ元大統領時代への原状回復を図る。

政権の中枢には国務長官候補のブリンケン氏やサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)らのオバマ政権時代の同僚たちを集めた。経験者が少なく無秩序な状態だったトランプ政権初期の人事とは異なり、チームワークを重視して円滑な政権の立ち上がりを狙ったと言える。

一方では、新味の少なさから「オバマ政権3期目」(米メディア)とと揶揄する声も聞こえてくる。ブリンケン氏やサキ大統領報道官らはトランプ前大統領政権時代、CNNやリベラル系メディアのコメンテーターとして活動していた。トランプ大統領支持者からは、トランプ前大統領が否定したエスタブリッシュメント(既得権益層)そのものだという批判もくすぶっている。

バイデン新政権は、40万人の犠牲者を出した新型コロナウイルス感染症の収束に向け、最初の100日間を勝負の期間と位置付けている。100日でワクチン1億回の接種を実現し、この間のマスク着用を国民の義務と呼びかける。バイデン政権高官はトランプ政権から受け継いだものは想像を越えて最悪だと述べ、ワクチンの供給体制の不備などを指摘した。

バイデン新大統領は新型コロナウイルスで広がった経済格差是正にも意欲的で、この数カ月で私たちが下す決定は米国の繁栄がすべての人に利益をもたらすか、一部の人に留まるかを決めると語っている。

公職経験がゼロだったトランプ前大統領と対照的に、40年以上の政治経験を持つバイデン新大統領は野党との協力にも自信を持っている。しかし、米国救済計画と題して発表した追加経済対策の中に最低賃金引上げなどの政策が入っていたことに対して野党共和党は反発した。バイデン新大統領が新型コロナ対策と格差是正の二兎を追えば政策実現の可能性が薄れる恐れもある。

米国再建の4年間

バイデン新大統領の選挙スローガンは、ビルド・バック・ベター(より良い再建を)米国を再び偉大にすると訴えたトランプ前大統領とは異なる形での米国再建を今後4年間で目指すという物で、大規模な投資による製造業復活などはトランプ前大統領の手法と似ている。

一方、経済・軍事面で影響力を増している中国に対しては日本などの同盟国との連携と国際社会での圧力で対抗、1対1の取引にこだわったトランプ前大統領とは異なり、息の長い外交努力を重視している。

バイデン新大統領は、すべての国民の大統領となると語り、社会の分断で傷ついた米国の団結を訴えている。アメリカン大学の教授は社会分断の怒りはトランプ前大統領政権時代からあったが、これが日常化し憎しみになった、と指摘するとともに道は険しいと予想している。

アメリカは政権交代で再び輝きを取り戻すことができるのだろうか。