アメリカ大統領就任式「乱入防止の鉄線の外側で起こっていたこと」

アメリカでは20日、新大統領となったジョー・バイデン氏と副大統領のカマラ・ハリス氏の就任式が無事行われた。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で規模が縮小され、式典はバーチャル形式で配信された。

現地の記者たちはこの歴史的な日の現地の様子を取材しようと思い、アムトラックのチケットを購入した。既に売り切れ間近だった。唯一購入できたのは午前3時25分ニューヨーク発の便のみだった。列車は感染防止で空いていた。それでもユーチューバーやカメラマンらしき若者たちが何人か乗っていた。

車内では「ノープランだよ。現地に言って決めよう」などの会話がされていた。早朝7時にワシントンDCに到着、外はまだ薄暗く、いるのは警察犬を連れた警官と州兵、そしてジョギングする人の姿も何人か見られた。

6日に起った過激派による議事堂乱入事件の後、大統領就任式のため、州兵2万5000人が派遣され、ニュースでは危険なので近寄るなとも言われていた。確かに現地は戦場かと思う程、ライフルを担いだ州兵が多く配備され、探知犬、私服警官らもたくさんいたがたくさんいたが、逆に安心感に繋がった。

有刺鉄線付きフェンスが張り巡らされ、議事堂には絶対侵入できない、何事も起こりえないシステムになっていた。重装備の兵士たちは鉄線の内側に1メートル間隔で立っている。兵士たちに逼迫した様子はなく、散歩中の人と笑い合ったりする姿も見られ、すれ違いざまに人々におはようと声をかける余裕もあった。

そこに立たされている兵士を見て、もう二度と暴動なんて起こすなよ、という強いメッセージ性を帯びた見せしめにも感じられる光景だった。

新大統領誕生

就任式イベントの時間が迫り、柵の外側にもかなり人の数が増えてきた。正午という時間をもって新大統領が誕生する。バイデン支持者多く集まっており、新大統領誕生と共に拍手でも起こるかと思いきや何も起こらなかったようだ。

バイデン派、トランプ派、その他宗教右派の団体がそれぞれの主張を時に激しくぶつけ合った。この日は6日のような過激派の姿はなく、キリスト教の保守的勢力(宗教右派)と呼ばれる人々の抗議活動が目立った。

このような一幕もあって「トランプは間違った方向にリードしていた」とバイデン支持者がメディアのインタビューに答えていたら通行人から様々なヤジが飛んでいた。ジェシカファミリーははDACA(ダーカ:不法移民の子に対して強制撤去処分を猶予する移民政策)を強く支持しており、バイデン新政権にはICE(移民税関捜査局)を廃止して欲しいと期待を膨らませている。

アメリカの危険な歴史の始りと危惧する人々はメガホンを通じて抗議した。彼等は自分の事をバイデン派でもトランプ派でもないクライスト(キリスト教徒派)と自らの事を表現していた。数多くの胎児が中絶によって犠牲になってきたがバイデン新政権は中絶を支援する方向だ。また、警察による残虐行為などで国が荒れることも心配視している。

同意できないから・お互いを憎しみ合うのは間違っている

この日の新大統領就任式では、ハリス副大統領、ミシェル・オバマ前米大統領夫人、ヒラリー・クリントン元国務長官の3人が紫の衣装で就任式に臨んだことから注目を集めた。共和党のシンボルカラー(赤)と民主党のシンボルカラー(青)を混ぜると紫になることから結束や融和の象徴だとしている。

新大統領就任式当日にはユーチューバーや報道陣が多く集まり、ちょっとしたいざこざが起こったり過激な主張や行動をする人たちばかりが注目を集めた。そんな中ほとんど誰からも視線を浴びることなくひっそりと置かれていたメッセージがある。

Stop Hating Each Other Because You Disagree
(同意できないからといってお互い憎しみ合うのはやめよう)

このようなこのような姿勢こそが今アメリカに一番必要なことではないだろうか。